顎義歯とは
顎義歯とは、上あごや下あごの一部を失った方のために作る、特別な入れ歯のことです。
「がんの手術」や「事故」などであごの骨や歯ぐきの一部を失った場合、そのままでは食べる・話す・息をするといった動作が難しくなります。
そうした機能を取り戻すために作られるのが、顎義歯です。
顎義歯の役割
顎義歯には、ふつうの入れ歯とは少し違う役割があります。
- 食べる(そしゃく)機能の回復 欠けた部分を補って、反対側の歯とバランスよくかめるようにします。
- 話す(発音)機能の回復 上あごに穴があいている場合、空気が鼻に抜けてうまく話せなくなります。 顎義歯でその部分をふさぐことで、発音がはっきりします。
- 見た目の回復(審美性) 顔の形が左右で違って見える場合、装置で支えることで自然な顔立ちに近づけます。
- 鼻や口と外の空気を仕切る 食べ物や飲み物が鼻の方へ漏れないように、口の中を区切る働きもあります。
顎義歯の種類
患者さんの状態に合わせて、さまざまなタイプがあります。
- 上顎義歯(じょうがくぎし):上あごの一部を補う装置。手術で空いた口と鼻の間をふさぎます。
- 下顎義歯(かがくぎし):下あごの骨を失った場合に、かみ合わせやあごの動きを補います。
- オブチュレーター(閉鎖床:へいさしょう):口と鼻を仕切って発音・食事を助ける装置。
いずれも、患者さん一人ひとりのお口の形に合わせてオーダーメイドで製作します。歯科技工士が医療用の樹脂(レジン)などで丁寧に作り、必要に応じて調整します。
顎義歯のメリット
- 食事を楽しめるようになる
- 言葉がはっきり話せるようになる
- 見た目が自然に戻る
- 自信を持って人と話せるようになる
顎義歯は、“見た目”と“機能”の両方を取り戻すための装置です。治療を通して、「もう一度自分らしく笑える」ことを目標としています。





舌接触補助床(ぜつせっしょくほじょしょう)とは
手術やけがなどで舌(した)の一部がなくなった方や、舌の動きが弱くなってうまく言葉を話せない方のために作る、
舌の動きを助けるための特別な入れ歯の一種です。
舌接触補助床の目的
舌は、食べ物をかんで飲みこむときや、言葉を発音するときにとても大切な役割をしています。しかし、舌の一部を失ったり、動きが制限されたりすると
- 食べ物をうまくまとめて飲みこめない
- 「サ」「タ」「ナ」「ラ」などの音が発音しにくい
- 舌が上あごに届かず、言葉がはっきりしない
といった不自由が生じます。
舌接触補助床は、失われた舌の高さや届く範囲を“床(しょう)”で補う装置で、舌が上あごに接触しやすくなるようサポートすることで、食事や会話をより自然に行えるようにします。
装置のしくみ
舌接触補助床は、主に下あごに装着する入れ歯型の装置です。通常の義歯よりも内側(舌側)にやや高く盛り上がった部分(床部)があり、そこに舌が触れることで、発音や食べ物の操作を補助します。
- 舌が短くなった方 → 舌が上あごに届くように高さを補う
- 舌の動きが弱い方 → 舌を支えて動かしやすくする
患者さんの口の中の状態を細かく計測して、一人ひとりの形に合わせてオーダーメイドで製作します。
舌接触補助床の効果
- 言葉が明瞭になり、会話がしやすくなる
- 食べ物をまとめやすくなり、飲み込みがスムーズになる
- 舌の動きが自然になり、発声のストレスが減る
- 外見を損なわず、違和感の少ない補助ができる
この装置は、「話す」「食べる」を取り戻すためのリハビリ補助具として、顎顔面補綴の分野でとても大切な役割を担っています。






顔面補綴装置とは
病気やけが、または生まれつきの理由で顔の一部を失ったり、変形した部分を補うための人工装置です。お顔の形や表情を取り戻すことで、見た目だけでなく生活のしやすさや心の回復にもつながります。
顔面補綴装置役割
顔面補綴装置は、次のようなケースで使われます。
- がんの手術などで鼻・目・耳などを失った場合
- 交通事故ややけどなどで顔の一部が損なわれた場合
- 先天的な形成異常(生まれつき耳や鼻がない・小さいなど)
これらの欠損部を人工物で補うことで、
見た目を整え、社会生活をより自然に送るためのサポートを行います。
顔面補綴装置の種類
失われた部位や範囲に応じて、いくつかのタイプがあります。
| 装置名 | 補う部分 | 主な目的 |
|---|---|---|
| 眼窩補綴物(がんかほてつぶつ) | 眼球の周囲・目のくぼみ | 義眼を含めて目の自然な見た目を再現 |
| 鼻補綴物(びほてつぶつ) | 鼻の欠損部 | 鼻の形を整え、呼吸や見た目を回復 |
| 耳介補綴物(じかいほてつぶつ) | 耳の欠損部 | 左右のバランスを整え、眼鏡やマスクの装着を容易に |
| 頬部・口唇補綴物 | 頬や口まわり | 表情の自然さ・食事時の機能改善 |


軟口蓋挙上装置(なんこうがいきょじょうそうち)とは
口の奥の「のど側のやわらかい部分(軟口蓋:なんこうがい)」がうまく動かない方のために使う、
発音や飲みこみを助けるための装置です。手術・けが・神経まひなどで軟口蓋の動きが弱くなると、「言葉が鼻に抜ける」「食べ物や水が鼻にまわる」といった症状が起こることがあります。この装置は、そのような症状を改善し、話す・飲みこむを自然にするために使われます。
軟口蓋とは?
口の奥を鏡で見ると、のどの手前に「やわらかい部分」が見えます。これが「軟口蓋(なんこうがい)」です。
話したり飲みこんだりするときに、この部分が上に動いて鼻との通路をふさぐことで、声や食べ物が鼻へ抜けるのを防いでいます。しかし、神経や筋肉の障害があると、この動きが弱まり、
- 声が鼻に抜ける(開鼻声:かいびせい)
- 飲み物が鼻から出てしまう といった問題が起こるのです。
装置のしくみ
軟口蓋挙上装置は、上あごに装着する入れ歯型の補助装置です。後方(のど側)に小さなプレート状の部分が伸びており、
それが「動かなくなった軟口蓋の代わりに」上へ持ち上げるように支えます。この構造によって、
- 発音時:息や声が鼻に抜けず、はっきり話せる
- 嚥下(えんげ)時:食べ物や水が鼻に流れにくくなる
といった効果が得られます。
軟口蓋挙上装置の効果
- 声がこもらず、明瞭な発音ができるようになる
- 食事のとき、飲み物が鼻に回らなくなる
- 会話や食事がしやすくなり、日常生活のストレスが減る
- 社会生活や対話に自信が戻る
この装置は、「話す」「食べる」「笑う」を支えるリハビリ用の医療装置です。
見た目では目立たず、装着しても自然に生活できます。


スピーチエイドとは
「話すときに声が鼻へ抜けてしまう」症状を改善するための補助装置です。口の奥にある「やわらかい部分(軟口蓋〈なんこうがい〉)」が
うまく上がらなくなると、空気が鼻へ抜けて、声がこもったり、鼻声のようになってしまいます。
スピーチエイドは、その軟口蓋の動きを人工的に支えて補うことで、正しい発音ができるように助ける装置です。
どうしてスピーチエイドが必要なの?
軟口蓋が動かなくなる原因には、いくつかあります。
- がんや手術による筋肉・神経の障害
- 外傷(けが)や脳の病気によるまひ
- 先天的な異常(口蓋裂〈こうがいれつ〉など)
このような場合、
空気が鼻に漏れる「開鼻声(かいびせい)」が起こり、
「サ」「タ」「ナ」「ラ」などの発音が不明瞭になります。
スピーチエイドは、これを補うために作られる装置です。
装置のしくみ
スピーチエイドは、上あごに装着する入れ歯型の補助装置です。
後方(のど側)に**やわらかい樹脂の部分(リフト部)**が伸びていて、動きが弱くなった軟口蓋を「持ち上げて支える」構造になっています。
- 発音のときに、鼻と口の間をしっかり閉じる
- 声や息が口から正しく出るように導く
その結果、鼻に抜けない明瞭な発音ができるようになります。


